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令和3年6月に成立し、公布された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」では、出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女と共に仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出産直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の措置を講ずることとされました(厚労省HPより抜粋)。
今回の育休法改正に伴う主要な改正内容としては、出生時育児休業の創設と育児休業の分割取得、育休を取得しやすい環境整備の措置、育児休業取得状況の公表の義務化、有期雇用労働者の育休・介護休業取得要件の緩和、育児休業給付に関する所要の規定の整備の6つが挙げられます。
わかりやすく言えば、今回の育休法改正により、これまで以上に主に男性の育休が取りやすくなる法改正がなされたということですが、本稿では、上記主要な改正内容のうち、「出生時育児休業の概要」について、弁護士がわかりやすくご紹介致します。
今回の育休法改正により、出生時育児休業、通称「産後パパ育休」が創設され、令和4年10月1日より施行されました。
この出生時育児休業とは、男性の育児休業促進のために、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間以内の期間を定めて行う育児休業のことをいいます。
たとえば、子の出生日が6月1日とすると、「8週間を経過する日」つまり56日(1週間の7日×8週間)経過した日である7月26日の翌日の7月27日内に4週間以内の期間を定めて取れる育児休業のことをいいます。
この出生時育児休業の主な対象労働者は、日々雇用される日雇労働者を除く産前産後休業を取得していない男性となります。
期間を定めて雇用される労働者については、その養育する子の出生日(出産予定日前に出産した場合には出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、この出生時育児休業の申出をすることができるとされています。
ただし、労使協定の定めにより、事業主は、下記の労働者からの出生時育児休業の申出を拒絶することができるとされています。
1.当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない者
2.出生時育児休業の申出があった日から起算して8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな者
3.1週間の所定労働日数が2日以下の者
あくまでも長期的に雇用される労働者の育休取得を確保しようとするのが、この出生時育児休業の制度趣旨にあると考えられるからです。
出生時育児休業の申出は、出生時育児休業の開始予定日と出生時育児休業の終了予定日を明らかにして、原則として、同開始予定日の2週間前の日までに行うことが必要とされています。
もっとも、労使協定により、「出生時育児休業の申出が円滑に行われるようにするための雇用環境の整備その他の厚労省令で定める措置の内容」と「出生時育児休業申出期限」を定めたときは、この労使協定上の「出生時育児休業申出期限」までが期限となります。
なお、この「出生時育児休業申出期限」は2週間を超え1月以内に限るとされています。
出生時育児休業の申出を行った労働者は、同開始予定日とされた日の前日までは、この出生時育児休業の申出を撤回することができます。ただし、出生時育児休業の申出を行ったという事実自体は撤回されないため、後述する出生時育児休業の申出回数にはカウントされることとなります。
出生時育児休業は、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に4週間である28日間が上限とされています。そして、この出生時育児休業期間は2回に分割して取得することが可能とされています。
ただし、2回に分割して取得する場合には、申出の初めに2回分をまとめて申し出ることが必要とされます。
そのため、先に説明したように、申出を撤回した場合には、同一の子に対して出生時育児休業ができる回数は残り1回となってしまうことになります。この点は、出生時育児休業独特の取り扱いであり、1歳までの育児休業とは取扱いが異なるので、事業主や会社の人事労務担当者の方は注意しなければならない点となります。
なお、1歳までの育児休業(子が1歳に達するまでの既存の育児休業)は、2回に分割して取得する場合であっても、出生時育児休業のように、まとめて申し出る必要はありません。
出生時育児休業給付金とは、出生時育児休業の申出を行った(支給要件を満たす)雇用保険の被保険者が、所定の手続きを経て公共職業安定所長に同給付金の支給申請を行った場合に支給される給付金のことをいいます。
出生時育児休業給付金の支給額は、休業開始時賃金日額に支給日数(上限は28日間)を乗じて得た額の100分の67に相当する額とされています。
なお、出生時育児休業期間中に、事業主より賃金が支払われた場合には、その支払われた額に応じて出生時育児休業給付金の支給額も減額又は支給されないこととなります。
出生時育児休業の申出をした労働者は、出生時育児休業の開始予定日とされた日の前日までに、事業主に対して、出生時育児休業期間において就業可能な日や所定労働時間内で就業可能な時間帯、その他の労働条件を申し出ることができます。
この申出に対して、事業主は、申出のあった就業可能な日や時間帯の範囲内で、日時を提示し、出生時育児休業開始予定日の前日までに申出のあった労働者の同意を得た場合に限り、次の条件の範囲内で、当該労働者を就業させることができるようになります。
1.就業させることとした日(以下「就業日」といいます)の数の合計が、出生時育児休業期間の所定労働日数の2分の1以下であること(1日未満の端数は切り捨てます)
2.就業日における労働時間の合計が、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の2分の1以下であること
3.出生時育児休業開始予定日とされた日又は出生時育児休業終了予定日とされた日を就業日とする場合は、当該日の労働時間数は、当該日の所定労働時間数に満たないものであること
これだけでは非常に分かりにくいと思いますので、具体例をご紹介します。
たとえば、1週間の所定労働日数が5日で、1日の所定労働時間が8時間の労働者が4週間休業し、当該休業期間中の所定労働日数が20日(4週間×5日)で所定労働時間数が160時間(20日×8時間)の場合、就業日数の上限は計「10日」、労働時間数の上限は計「80時間」、休業開始・終了予定日の労働時間数は1日「8時間未満」としなければならなくなるということです。
本稿では、改正育休法の「出生時育児休業」についてその概要をご紹介致しましたが、育休法をはじめ労働保険や社会保険に関わる法規は毎年のように改正が行われています。改正の都度、企業が自ら改正法規の概要を調査したうえで、事業活動に支障が出ないよう活かすことは必ずしも容易ではありません。
一方、顧問弁護士のサポートがあれば、事業活動に関連する法改正情報にいち早く対応することができますし、法改正情報について顧問弁護士から分かり易く説明を受けたり、顧問弁護士に企業内研修を行わせるなどして、企業全体に法改正情報を周知させることができます。
法改正情報への迅速かつ適切な対応・環境整備は、専門家である弁護士のサポートを受けながら進めていくことが大切です。
弁護士法人いかり法律事務所には、法改正情報にいち早く対応できるサポート環境(企業内研修も行っています)をご提供できますので、福岡で顧問弁護士をご検討又はお探しの方は、お気軽に当法律事務所までお問合せ下さい。
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