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労働者派遣事業とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させることを業として行うことをいいます(労働者派遣法2条)。この定義に当てはまるものは、すべて労働者派遣法の適用を受けることになります。
労働者派遣法第4条により、以下の業務については、労働者派遣事業を行うことが禁止されています。
なお、港湾運送業務は、港湾労働法の適用を受け、労働者派遣事業が認められる場合があります。
1.港湾運送業務
2.建設業務
3.警備事業
4.その他、医療関係業務など業務の適正確保のため政令で定める業務
本条に違反した場合には、派遣元に対して、刑罰として1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条第1号)のほか、行政処分として許可取消(同第14条第1項)、事業停止命令(同第14条第2項)、改善命令(同法第49条第1項)、労働者派遣の停止命令(同法第49条第2項)が科され、派遣先に対しては、行政指導としての勧告(同法第49条の2第1項)や企業名の公表(同法第49条の2第2項)などが行われることがあります。
労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣に申請書を提出して、厚生労働大臣の許可が必要となりますが、新規の許可申請手続き自体は、事業主の主たる事務所を管轄する所轄都道府県労働局が行います。
福岡労働局相談窓口は需給調整事業課
TEL 092-434-9711 FAX 092-434-9771
労働者派遣事業の許可申請書のほか、以下の添付資料が必要となります。
許可申請を行う者が法人か個人かにより必要書類も異なり、法人が新規許可申請を行う場合には、以下の添付書類が必要となります。
① 定款又は寄付行為
② 登記事項証明書
③ 役員の住民票及び履歴書
④ 役員が未成年である場合の代理人に関する書類
⑤ 個人情報適正管理規程
⑥ 最近の事業年度における貸借対象表及び損益計算書
⑦ 株主資本等変動計算書等
⑧ 法人税の確定申告書の写し
⑨ 法人税の納税証明書
⑩ 不動産の登記事項証明書(事業所)
⑪ 派遣元責任者の住民票の写し
⑫ 派遣元責任者の履歴書及び過去3年以内に、派遣労働者に係る雇用管理の適正な実施のために必要な知識を習得させるための講習として厚生労働大臣が定める派遣元責任者講習を修了したことを証する書類
⑬ 派遣労働者のキャリアの形成の支援に関する規程
⑭ 派遣労働者の解雇に関する規程
⑮ 派遣労働者に対する休業手当に関する規程
厚生労働大臣の許可を得ずに労働者派遣事業を行った場合には、刑罰として1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されることがあります。
① まず、所轄都道府県労働局の説明や助言を受け、事業計画を立案し、事業所等の準備を行います。
② 次に、許可申請書の添付書類として、派遣元責任者講習受講証明書が必要となるため、派遣元責任者講習受講を受けます。派遣元責任者講習は民間の機関が適宜実施しています。
③ 申請書類を準備して所轄都道府県労働局長へ提出します。
④ 所轄等道府県労働局長は申請書類を受理すると、申請内容を調査・確認し、厚生労働省に送付され、厚生労働省において審査がなされます。
⑤ 厚生労働省において、労働政策審議会の諮問を経て許可又は不許可の決定がなされると許可決定の場合は許可証が交付され、他方、不許可決定の場合は不許可通知書が交付されることになります。
⑥ 許可証の交付を受けてはじめて、労働者派遣業の事業を開始することができます。
労働者派遣事業の申請書の提出から許可までの期間は、概ね2~3ヵ月が必要とされています。
申請件数によっては、許可証の受領まで3カ月以上の期間が必要となることもあります。派遣元責任者講習の受講など申請書類の準備期間を考慮すると、4~5ヵ月は必要となると考えておくのが無難です。
労働者派遣法第7条第1項第1号により「専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと」が許可の要件とされています。
これは、特定企業のみに労働者を派遣することを禁止して、もって派遣先が当該派遣元から労働力の供給を受け続け、本来使用者として正社員を雇用した場合に負担する必要のある責任を免れようとする弊害の発生を防止する点にその趣旨があります。
この要件に該当するか否かは、定款等に記載された事業目的だけではなく、その企業の実態にも照らして判断されることになります。
労働者派遣事業の許可の有効期間は3年となります。
有効期間満了後、更新手続きを経た更新後の有効期間は5年となります。
労働者派遣事業の許可取消事由として、以下の事由が挙げられます。
① 欠格事由に該当する場合
② 派遣法・職安法等の違反があった場合
③ 許可条件違反があった場合
④ 派遣法第48条第3項による指示に違反した場合
上記取消事由に該当する場合は、厚生労働大臣により許可が取り消されることがあります。取消事由に該当したとしても必ずしも許可が取り消される訳ではなく、取消はあくまで裁量的であるとされています。
労働者派遣事業の許可取消事由の一つである欠格事由は以下の通りとなります。
① 一定の刑罰に処せられ、その執行が終わりまたは執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しないもの(労働者派遣法第6条第1、第2号)
② 成年被後見人もしくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの(同第3号)
③ 労働者派遣事業の許可を取り消されてから5年を経過しないもの(同第4号)
④ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人が欠格事由に該当するもの(同第9号)
⑤ 法人であって、その役員のうちに欠格事由該当者があるもの(同第10号)
⑥ 労働者派遣事業の許可を取り消された法人で当該取消の処分を受ける原因となった事項が発生した当時に役員であった者で当該取消から5年を経過しないもの(同第5号)
⑦ 許可取消の手続開始後から処分日等の間に事業の廃止届を提出した者で当該届出から5年を経過しないもの(同第6号)
⑧ 許可取消の手続開始後から処分日等の間に事業の廃止届を提出した者が法人で手続の通知日前60日前以内に当該法人の役員であった者で当該届出の日から5年を経過しないもの(同第7号)
⑨ 暴力団員等に関する欠格事由(同第8号、11号、12号)
派遣元は毎事業年度経過後3カ月以内に、当該事業年度に係る労働者派遣事業を行う事業ごとの当該事業にかかる事業報告書および収支計算書を作成し、厚生労働大臣に提出しなければなりません(労働者派遣法第23条第1項、第2項)。
定期報告を怠った場合には、許可の取消しや事業停止命令、改善命令などの行政処分が行われることがあります。
派遣元は、毎事業年度経過後3カ月を経過する日までに、関係派遣先への派遣割合を厚生労働大臣に報告しなければなりません(労働者派遣法第23条第3項、同施行規則17条の2)。派遣割合の報告を怠った場合には、行政指導としての指示が行われることがあります。
派遣労働者を海外に所在する事業所その他の施設において就業させるための労働者派遣をしようとするときは、事前に事業主を管轄する所轄都道府県労働局へその旨を届け出なければなりません。提出期限は海外派遣開始日の前日までとされ、手数料はかかりません。
事前の届出を怠った場合には、刑事罰として30万円以下の罰金を科され、または行政処分として許可の取消、事業停止命令、改善命令が行われることがあります。
派遣元は、派遣労働者にとって適切な派遣元と労働契約を締結できるように、平均マージン率など以下の情報提供が必要となります(労働者派遣法第23条第5項)。
① 派遣労働者の数
② 派遣先の数
③ 平均マージン率
④ 教育訓練に関する事項
⑤ 労働者派遣に関する料金の額の平均額
⑥ 派遣労働者の賃金の額の平均額
⑦ その他労働者派遣事業の業務に関し参考となると認められる事項
情報公開の方法は、事業所への書類の備え付け、インターネットの利用その他適切な方法により行うものとされています。
更新手続きの窓口は、所轄都道府県労働局となります。
法人と個人によって異なりますが、新規許可手続きに申請した書類よりも簡素な手続きとなります。
新規許可申請時に提出した書類の内容(事業主や事業所、役員、派遣元責任者に関する内容)に変更があった場合には、該当書類の提出が必要となります。
更新申請は、許可有効期間満了日の3カ月前までに行う必要があります。
許可有効期間の更新に当たり、欠格事由に該当せず、許可基準を満たす必要があります(派遣労働者法第6条、同第7条)。
事業主(代表者)や事業所、役員、派遣元責任者に関して、内容に変更があった場合には、許可有効期間の更新に先立ち各種変更手続きが必要となります。
本稿では、労働者派遣事業の許可、更新に際して必要な手続きや書類、留意事項などについてご案内しました。
労働者派遣事業の許可申請をはじめ、派遣労働者の労務管理や労働基準監督署への対応など労働者派遣事業に関して何か気になることがあれば、労働者派遣事業に詳しい福岡の弁護士法人いかり法律事務所へお気軽にご相談下さい。
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