問題社員対応
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問題社員対応
企業は,社員が業務時間中にサボっている、会社に無許可で兼業している、会社の内情をFacebookやTwitterなどのソーシャルネットワーク(以下「SNS」)に投稿する、犯罪行為を行った等、問題行為を行う社員に頭を悩ませ、弁護士に対するご相談も増えています。
このような社員に対してどのように対応すればいいのでしょうか。ご相談の多い社員のSNS投稿と犯罪行為に焦点を当てて企業の取るべき対応について弁護士が解説します。
誰もがスマートフォン片手に簡単に情報を発信できる時代になっています。社員が自宅等にて職務時間外のプライベートな時間にブログ、FacebookやTwitter、Instagram等のSNSに会社の内情を投稿した場合、企業としてはどのように対応すればいいのでしょうか。
この投稿が、そもそも勤務時間内においてなされたものである場合には、その投稿の内容が何であれ、就業規則に定められているパソコンの利用ルール等の服務規律違反や職務専念義務違反を根拠として、懲戒処分の対象になります。
他方、社員が自宅等にてプライベートな時間に投稿を行った場合には、それは私生活上の行為にあたります。判例上、私生活上の行為に対する懲戒処分は、企業秩序に関係を有する場合に限り懲戒処分の対象となります(国鉄中国支社事件・最判昭和49年2月28日)。逆に言えば、企業秩序に関係を有しないものであれば私生活上の行為として、懲戒権は及びません。
投稿した内容が会社の内情であれば、通常は、会社の秘密情報にあたる可能性があり、企業の利益が害され、企業秩序に関係を有すると考えられることから、就業規則に懲戒事由として定められていれば懲戒処分の対象となります。
まずは、社員が実際に投稿を行ったのかどうか、投稿を行ったとして、いつ、どこで、どのような投稿を行ったのかなど調査を行うべきです。可能な限り客観的な資料を収集するとともに、当該社員本人に対するヒアリングを行うなどの方法があります。顛末書や報告書(※あくまで調査段階なので始末書ではない)の提出を求めるという方法もあります。
調査の結果、社員が会社の内情の投稿を行った事実が明らかになった場合には、当該投稿により、企業秩序に与える影響が多い場合には懲戒処分を検討します。
懲戒処分を行う場合には、就業規則で懲戒事由が定められていなければならず、当該投稿行為が懲戒事由に該当することが必要です。その上で、懲戒処分をする必要性があるのかどうか、また処分の程度が相当かどうかという点の検討が必要になります。投稿の具体的内容や態様などに照らして具体的に判断していくことになります。もっとも、情報の内容にもよりますが、懲戒処分の必要性という観点からは、まずは削除を求めて注意するなどの対応も検討されるべきでしょう。
懲戒処分についてはこちらをご参照ください。
インターネット上でのSNS利用は一般的になっていることから、企業では、社員が会社の内情等をSNS上に投稿し企業秩序を脅かすリスクに備え、労使間の契約や就業規則などで予防線を張っておくことが重要になってきます。
具体的に、就業規則で、業務上知り得た情報を秘密情報として保持する義務があることを定めるとともに、インターネット上のSNSなどで秘密情報や会社の内情に関する情報を投稿することを禁止することです。関連して、会社が仕事用のパソコンや携帯電話等を支給する場合には、利用ルールを定めて職務時間外や職務に関係のない利用を禁止することも必要です。特に重要と判断される事項については、入社時に別途誓約書を差し入れてもらうと、社員の意識も高めることができて有益です。そして、これらの服務規律や義務に違反した場合には、懲戒事由となることを明記するとよいでしょう。
また、ルールを作って終わらせるのではなく、日ごろから、会社の情報管理を徹底するとともに、社員に対する研修を実施する等して意識を高めていくことが肝要です。
企業より、社員が犯罪を犯して逮捕・勾留され有罪判決を受けて対応に困っているとの相談をお受けすることがあります。その犯罪が、経理担当者の横領などの職務遂行に関するものであれば懲戒処分の対象となることは明らかですが、では、たとえば、飲酒運転や交際相手に対する暴行など、職場外のプライベートな時間に犯した犯罪はどのように考えるべきなのでしょうか。
懲戒処分は、社員の企業秩序違反に対する会社による制裁です。そのため、社員の私生活所の行為は、原則として懲戒処分の対象になりません。ただし、判例は、職場外の職務遂行に関係がない行為であっても、企業秩序に直接の関連を有するもので会社の評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、懲戒処分の対象となるとしています( 最判昭和49年2月28日 )。
そして、懲戒処分の可否及び処分内容を検討する際は、①犯罪行為の重大性(性質や情状など)、②会社の事業の内容や規模、経済界に占める地位、経営方針、③当該社員の会社内における地位、④報道により犯罪行為の内容、実名又は社名等が公表されているか否かが考慮されます。
先に述べたように、懲戒処分を行う場合には、就業規則で懲戒事由が定められていなければならず、犯罪行為が懲戒事由に該当することが必要です。その上で、懲戒処分をする必要性があるのかどうか、また処分の程度が相当かどうかという点の検討が必要になります。
なお、懲戒処分についてはこちらをご参照ください。
社員が逮捕・勾留されたとしても、刑事手続き上は、無罪推定の原則により、逮捕・起訴後の公判手続きを経て有罪判決が確定するまでは、当該社員が犯罪行為を行ったことが法律上確定されるわけではありません。
事実関係を確認したうえで、当該社員が自白している場合には有罪判決確定前であっても懲戒処分の手続きを前に進めるのは合理性があると言えますが、少なくとも社員が否認して争っている場合には、上記懲戒処分の有効性の判断が厳格であることに照らすと、検察官による起訴の時点で、後述の起訴休職処分としたうえで、有罪判決確定後に懲戒処分の手続きを開始すべきと言えます。
有罪が確定するまでの間、逮捕・勾留状態が続いている限りは欠勤状態が続きますが、在宅起訴されたり、起訴後に保釈された場合には出勤が可能になります。しかし、当該社員が出勤すると職場が混乱するおそれがあることから、就業規則で社員が起訴された場合には休職を命令できる起訴休職命令制度の定めがある場合には起訴休職命令処分を検討します。
ただし、このような制度を設けていても、判例上、起訴休職命令が有効とされるには、 起訴により企業の社会的信用が失墜し、又は職場秩序に支障が生じるおそれがあるか、或いは労働者の勾留や公判期日への出廷のために労務の継続的提供に支障が生じるおそれがある場合に限られています(山九事件・東京地判平成15年5月23日判決、日本冶金工業事件・東京地判昭和61年9月29年判決)。
社員の問題行為については、労働法や雇用契約,就業規則に従って, 早期にかつ適切に対応する必要があります。必要に応じて,懲戒処分も見据えていかなければなりません。懲戒処分の有効性のハードルは高く、処分後に従業員から訴えられることもあり得るため、慎重に対応する必要があります。
そのためには,労働法の専門家である弁護士のアドバイスが必要不可欠ですので,問題が発覚した段階で速やかに,是非一度,いかり法律事務所の弁護士にご相談ください。
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