メンタルヘルス

第1 メンタルヘルス不調の疑いある社員への対応

医師による面接指導や診断を勧める

近年、長時間労働やパワハラ等によってうつ病をはじめとする精神疾患に罹患する社員の対応に関するご相談が増えています。会社は、社員に対する安全配慮義務を尽くすため、社員の健康状態を把握して適切な対応を取ることが求められます。

社員に長時間労働等によるメンタルヘルス不調が疑われた場合、まずは産業医による面接指導や専門医(心療内科、精神科)による診断と治療を受けることを勧めるべきです。

受診命令の検討

面接指導や受診を勧めたにもかかわらずこれに応じない場合、業務命令として面接指導や会社指定の産業医の診断を受けさせることを検討すべきです。

就業規則等の根拠がある場合は、これに従い受診命令を発令します。このような根拠がない場合でも、労使間の信義ないし公平の観念に照らし、合理的かつ相当な措置であれば受診命令も有効とされた裁判例もあります。

メンタルヘルス不調者に対して会社がとるべき措置

社員がメンタルヘルス不調であると判断された場合、会社はどのような措置を取るべきなのでしょうか。

個別の事情に応じて判断されるべきですが、医師の意見や診断結果を勘案して、社員の健康状態に応じて、精神的緊張感のある過重な業務につかせないようにする、労働時間短縮等の業務軽減、配置転換、人員補充、休職などの措置を取ることが考えられます。

メンタルヘルス不調を理由とする休職命令

メンタルヘルス不調の社員回復する可能性がないと断言できる場合、傷病による能力不足を理由とする普通解雇をすることも考えられますが、そのような立証は容易ではありません。解雇権濫用法理(労働契約法16条)のもとでは、解雇が有効となる場面はかなり限定的になるため、傷病休職制度がある場合であれば休職させて治療の機会を与えるべきです。

この場合、就業規則で予め「業務外の傷病により欠勤が連続して一定期間達したとき」「精神疾患により業務に堪えないとき」「業務外の傷病による業務支障が生じたとき」などの事由が生じた場合には休職命令が発令できるよう定めておき、さらに一定の休職期間の経過によって当然の退職事由又は普通解雇事由と定めることによって、休職期間満了によって自然退職させ又は普通解雇することが可能となることもあります。

もっとも、このように休職が解雇猶予の性質を有することから、休職を命じるかどうかの判断は慎重にされるべきであり、たとえば、職種が限定されていない場合には軽易な業務への配置転換など他に取り得る方法がないか検討する必要があります。

メンタルヘルス不調を理由とする休職後の復職

メンタルヘルス不調を理由に休職している休職者が従来の職務を通常の程度に行える状態になれば「治癒」したと判断することになりますが、「治癒」したと言えない場合には、最終的には自然退職又は解雇を検討せざるを得ないことになります。

もっとも、自然退職又は解雇した後に「治癒」していたかどうかをめぐって労使間で対立し会社の責任が問われる可能性があります。そこで、実際に「治癒」したかどうかだけではなく、休職者が復帰できる余地を十分に検討したかという会社側のプロセスも問われます。

具体的には、復職時点での医師の意見や診断結果を踏まえて、休職者の職種が特定されていない場合には、配置転換することで債務の本旨に従った労務提供が可能かどうかが検討されるべきです。休職者の職種が特定される場合には、原則として治癒とは従来の職務を通常の程度に行える健康状態に復したときと解されています。もっとも、リスクを軽減するために、職種が限定されていても他職種への転換の可能性を検討するプロセスを踏むべきと考えられます。

第2 従業員に対するストレスチェックの実施

労働安全衛生法第66条の10に基づき、50人以上の労働者を抱える事業場では、すべての労働者に対して年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。

第3 メンタルヘルス社員の法的問題については
弁護士にご相談ください

メンタル面の不調を来した従業員については、企業側で医師への受診を促すなどの対応や、休職や復職をめぐる対応などが求められます。精神疾患の原因として職場の長時間労働やハラスメントが関係していることも多く、従業員を守るためにも、日頃からのストレスチェックと労務管理等が重要となります。

いずれについても、事前に紛争化を防ぎ、適切な対応をとるためには、労働法に関する知識と経験が必要不可欠になってきますので、是非、いかり法律事務所の弁護士にご相談ください。